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HOW ABOUT TONGUE THRUSTING
さて今度は、舌突出癖についてです。
舌突出癖には、嚥下時(物を飲み込む時)に歯を舌で前方に押し出したり、歯と歯の間に舌を突っ込んだりする癖と、口を閉じている時に、歯と歯の間に舌を突っ込む癖の2種類あります。ある場合には、この原因は遺伝形質と関係があるかも知れませんし、他の場合には、普通の嚥下方法を初めから一度も体得しなかった子供にみられます。時々、この舌突出癖は指しゃぶりの癖をやめた後に依然として残っていることがあります。
その原因のいかんにかかわらず、舌突出癖は治すべき癖の一つです。


HOW DOES TONGUE THRUSTING AFFECT THE TEETH?
一体どの様にして、舌突出癖が歯に影響を与えるのでしょうか。
舌が歯を押し出すカの大きさにもよりますが、前歯が突出したり、ある場合には顎(あご)の内に入り込んだりします。時々発音障害(舌たらずの発音のような)がこの癖によって生じることがあります。開咬(上下の歯がくっつかない咬み合わせ)が舌突出癖の結果現れることが非常によくあります。


AT WHAT AGE SHOULD THE HABIT BE BROKEN?
何才までに、この舌突出癖をやめさせるべきでしょうか。
お子様が治療を受けられる年齢に達すればできるだけ早めに。
この年齢はその子の成熟度のいかんにより、ケースバイケースであります。

HOW DO YOU BREAK THE HABIT?
どの様にして、この舌突出癖をやめさせればよいのでしょうか。
一般に認められている舌突出癖除去のアプローチの仕方は次のようなものです。
 1. 小児心理学の応用
 2. 筋機能(訓練)療法
 3. 言語治療
 4. 機械的装置(舌の前方への動きをストップさせると同時に、子供が舌を正しい位置におくのを体得するような装置)


指しゃぶりや舌突出癖があなたのお子さんの歯や顎(あご)に与える影響は多少なりともあるもので、放っておくには、あまりにも重大な問題であります。
お子さんの発達にあわせて、できるだけ早い年齢にやめさせるのが望ましいのです。
いまあなたが、お子さんの口の癖に関心をもつことは、この問題の解決への第一歩となるばかりでなく、お子さんが大きくなってから不良習癖が原因となって引き起こった異常のために矯正歯科治療を受けなくてすむかもしれません。
あなたのお子さんの問題を最も良く解決する方法については、かかりつけの小児歯科医又は矯正専門医に相談して話を伺って下さい。


おわりに
指しゃぶりや舌突出癖などの口の癖が必ずしも歯や顎(あご)の不正な状態を作り出すとは限りませんが、その強さ・頻度・期間の3つの要素の閾を越えると必ず発現するものです。
口の癖は子供の意思や欲求の表現の1つとも考えられておりまして、ただ単に身体的行動のみではなく、心理的行動の要素も多く含まれております。だからこそ、口の癖をやめさせる時、子供の心理的な状態を充分よく考えたうえで行う必要があるのです。

癖というものをその子の人間としての総合的な行動の1つとしてとらえ、子供に自発的にやめさせる様に話し合うことが必要であります。
それにも増して、お母さん・お父さんの真の愛情が矯正歯科治療以上の効果を与えるのだということをよく考えておいて下さい。


「指しゃぶり」に対する当医院の基本的な考え方
 指しゃぶりが歯並びの悪さの原因になることは事実です。しかし、歯やあごにほとんど影響のない場合もありますので、むやみに心配されることはないと思います。
 本来、指しゃぶりとはちょっとした癖ですが、吸う強さ、頻度、期間などが著しく程度を越えると、前歯がかみ合わなくなったりすると考えられています。これは永久歯の歯並びにも影響することもありますし、前歯のすき間から息がもれて発音しにくくなることがあります。また水やつぱを飲み込んだり話すとき舌を突き出す舌(ぜつ)突出癖が新たに生じることもあります。
 指しゃぶりは子供の意思や欲求の表現の一つとも考えられており、心理的要素も多く含まれています。指しゃぶりを始めたら早期に親が意識的にとってやるのがいいのですが、それには本を読んでやるとき手をつなぐとか、なるべく手を使う遊びを工夫する、一人でいるときなるべく話しかけてあげるなどスキンシップで指しゃぶりする機会を少なくしていくことが望ましいと考えます。四、五歳になるとなぜいけないのか理解できるようになりますので、やさしく理由を説明してあげて下さい。園の先生や歯科医に言ってもらうのも一法です。
 このようになるべく心理的アプローチで行うのがよいのですが、子供が頭でわかっても無意識にやってしまう場合には、十分に子供と話し合ったうえ機械的な方法を試みます。例えば吸う指に包帯を巻く、ひじが曲がらないよう工夫する、歯科医に防止装置を作ってもらうなどです。 しかし、何より大切なのは指しゃぶりをやめさせることではなく、指しやぶりを生んだ心理的背景を、愛情でもって子供と一緒に解決することだと考えます。