平成13年10月9日
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9:III級不正咬合の鑑別診断 --2

調査内容-1

 混合歯列前期の反対咬合者に対し診断の結果、上顎歯列弓の急速拡大装置と上顎前方牽引装置による被蓋改善を試み、その後歯年齢IIIB期まで経過観察を行った。それら症例毎の、初診時、急速拡大装置と上顎前方牽引装置撤去直後、および、約1〜2年後の咬合安定時期の3時点の模型分析所見やオクルーザルX線写真、装置使用時間表等を比較検討しました。

 調査結果は、下記のごとくです。


 調査結果-1

1. 上顎の急速拡大装置により、3〜4週間の間に平均3.19mmの側方拡大量 
  が得られました。
2. 各症例に使用した上顎前方牽引装置の使用期間は実質平均6ヵ月を目標と
  しましたが、平均使用期間は5.71か月でした。
3. 一日の使用時間の目標を10から12時間とし、装着状態を記録用紙に
  記入させました。その結果、記録用紙が全て残っている40名の上顎前方 
  牽引装置の平均使用時間は1日10.51時間でした。
4.被蓋改善のための、抑制矯正処置の結果、
  (i) 上顎永久前歯の反対被蓋が改善された症例、
  (ii) 切端位にあって不安定な症例、
  (iii) 一旦正常被蓋が獲得されるも後戻りして、また反対被蓋となる症例、
  (iv) 治療期間中に一度も正常被蓋が獲得出来なかった症例
の4類型に分類できました。

 次に、セファログラムによる経年変化を調査しました。

調査内容-2

 同様に3時点におけるセファログラムを用い、両装置撤去後の咬合安定時期の咬合状態が正常被蓋のものをN群、反対被蓋のものをR群として、セファロ分析の距離計測と角度計測を行なって比較検討しました。
 統計処理には株式会社安永コンピューターの統計ソフト:「バーサスタット」を使用しました。

 下図は、咬合安定時期の咬合状態が正常被蓋のN群の例です。

 下図は、咬合安定時期の咬合状態が反対被蓋のR群の例です。

鑑別診断のために縦断的調査をおこない、咬合安定時期の咬合状態が正常被蓋のN群と反対被蓋のR群がどのような顎態動向を示しているのかをAO-BOとAPDI について調べました。

 AO-BO値が大きくAPDI 値が基準値に近く小さい程、正常被蓋のN群(緑のマル)が多い傾向がみられました。また、反対被蓋のR群では、装置撤去後の悪化傾向(リアクション)が多くみられました。
 急速拡大装置と上顎前方牽引装置による被蓋改善を試みても、顎態の改善しない症例(黄色のマル)については装置装着時間の極端に低い場合でしたので今回の資料からは省いております。



縦断的調査-2 同様にODIとAPDI についても調べました。

ODIとAPDIについては、顎顔面形態の垂直関係と前後関係をそれぞれ密接に表す指標ですから、もっとクリアーに分布すると期待していましたが、ばらつきが大きいものとなりました。