平成13年10月9日
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4:早期治療の目標と進め方

Class IIIシンポジウムでは、class IIIの口腔育成における治療学的アプローチの中で、長期咬合管理の理念として、以下を決めています。
1:個成長変化の変異に対応する
2:顔面非対称や顎関節症等の途中発症に対するリスク管理を行なう
3:各発達段階での治療および管理目標を明確化する
4:適切な時期に治療を施し、最大の効果を得る
5:患者中心の医療を志向し、治療は短く、管理は長く
6:外科的矯正治療による対応も含めチーム医療を重視

そして、第一期治療の目標として、以下を決めています。
1:口腔衛生状態の評価とそれに基づいた指導による新生ウ触予防
2:下顎の機能的偏位の改善と顎位の安定
3:顎関係の3次元的不調和の可及的改善
4:正中線の修正とその管理
5:適切な前歯部被蓋の獲得;将来のアンテリア・ガイダンスの獲得
6:左右均等のポステリア・ストップの獲得;大臼歯関係をI級にする
7:側方歯群の萌出空隙の獲得
8:機能的環境の整備;悪習癖、低位舌、口呼吸、口唇離開等への対応

さらに、第一期治療の進め方としては、
1:可能な限り非抜歯で治療を進める
2:部分的マルチブラケット装置と上顎前方牽引装置を用ることが多い
3:前歯部被蓋改善の際、下顎切歯を過度に舌側傾斜させない
4:可及的短期間に(1年をめど)行ない予知性の無い治療は避ける
5:カリエスリスクの評価を重視して新生ウ触の予防につとめる
6:機能的環境整備は必要に応じて行なう

非常に良くまとめられた内容です。ただ、実際の臨床面でアンダーラインの部分が疑問点です。
具体的に用いる矯正装置については、『前歯部被蓋改善を目的とした主な第一期治療メカニクス』として、
1:舌側弧線装置(リンガルアーチ)
2:機能的矯正装置
3:部分的マルチブラケット装置
4:チンキャップ
5:上顎前方牽引装置、上顎切歯部前方牽引装置

『付加的装置』として、
1:側方拡大装置  (1)急速、 (2)緩速
2:class III エラスティック
3:スライディングプレート
4:切歯斜面板


等を挙げています。
 そして、第一期治療のポイント(注意点)としては、
1:前歯部被蓋改善に対し効率の良い治療メカニクスを選択する
2:下顎切歯を過度に舌側傾斜させない
3:下顎の側方偏位(骨骼性非対称)が軽度から中等度であれば可及的に改善を計る

となっています。上下顎の前後的位置関係や下顎の側方偏位の重度とは一体何を基準に判別するのでしょうか?実際に治療をやってみないと判らないこともありますし、生体(ヒト)が相手の場合、個体差以上に家庭環境や社会的背景も考慮に入れなければなりません。
 ここでは各項目について、その判断基準の困難性や問題点を討議する予定ですが、class IIIの口腔育成における長期咬合管理の理念そして治療学的アプローチとしては実に良くまとまった内容です。

 それでは、III級不正咬合の治療モデル、すなわちclass III 症例の治療の流れ(フローチャート)についておさらいします。